「世界史」の受験勉強について

こんにちは、篠原塾ライターの阿部です。

この記事では、受験世界史の勉強法について「記述(=論述)対策」「マーク対策」という視点からそれぞれ紹介しています。世界史が得意な人も苦手な人も、好きな人も嫌いな人も、「ココはおさえておこう」というポイントは変わらないので、是非ご覧になっていってください。できるだけ多くのことを吸収していってくださいね!

記事の構成は以下の通りです。

【論述対策・マーク対策に共通する重要なこと】

【論述対策】

【マーク対策】

【おすすめ参考書】

論述問題は国公立大学の二次試験では必ずと言っていいほど出題されます。ですがほとんどの受験生は、英語・数学・国語など他の科目に膨大な時間を割かないといけないのに、世界史の論述問題に十分な時間をかける余裕はおそらくないでしょう。だからこそ今回は、「いつ論述練習を始めるのか」「どういう意識で取り組むのか」「どれくらいの量をこなすのか」という明確なポイントをお伝えできればと思います。

また、論述対策が必要なくマーク対策だけで大丈夫だよという方にとっても、しっかりマーク対策を伝授していきます。

少しだけ自己紹介をすると、僕は某国立大学に通う大学生で、高校生の時から世界史が好きでした。高3の記述模試で世界史偏差値79を記録したこともあり、センター本番で100点(現役)を取っています。でも、苦手な人に寄り添って記事を書いていますので、安心してくださいね。

【論述対策・マーク対策に共通する重要なこと】

論述対策やマーク対策を紹介する前に、世界史を勉強する上で絶対に押さえておきたいことを2つお伝えします。これは、論述にもマークにも共通することです。

とはいえ何か革新的なことを紹介できるわけではありません。きわめて基本的な事です。僕が世界史を得意になれたのも、ひとえに地道な作業を毎日続けてきたからです。できないうちは苦しいですが、できないままで終わることはありません。正しく継続していれば必ず結果がついてきますので、頑張りましょう!

大事なことの一つ目は「地理的な勉強を怠らないこと」です。世界史で扱われる地域は非常に広く、多くの地名が登場します。みなさんは何も見ないで頭の中に世界地図をイメージできますか?例えば「インドシナ半島」と聞いて即座に場所を指摘できますか?「アフガニスタン」と聞いてすぐに場所が分かりますか?

世界史を勉強する上で世界の地理の知識は必要不可欠です。このことは篠原さんも世界史勉強法の動画で強調されています(動画:https://youtu.be/a4gjaMPKlO8)。

僕はもともと世界地図が好きで、学校の休み時間によく地図帳を眺めていたので(※不審者)、世界史を習い始める段階ですでに国の位置は一通り頭に入っていました。つまり世界史を学ぶ土台ができていたのです。これが頭に入っていないと、世界史がまるでわからなくなります。それこそただの丸暗記に終始して良いことがありませんし、なにより試験で点になりません。

もし世界の地理が怪しい人は、そこに立ち返って勉強することを強くお勧めします。世界史を勉強していてしょっちゅう出てくる国に関しては位置関係が分かるようにしてください。特にヨーロッパはごちゃごちゃで大変だと思いますが、覚えてしまえば世界史の勉強が楽になります。おすすめは白地図をプリントアウトして「ここはポーランドやな」「ここはギリシアやな」「ここはベトナムやな」みたいに覚えていくことです。「白地図専門店」というサイトに行けば「東南アジア」「南米」「西アジア」のような地域別の白地図を利用する事が出来ます(白地図専門店:https://www.freemap.jp/)。ただし、やりすぎには注意してください。例えばアフリカの地理を覚えている時に、ガボンとかマイナーな国まで覚える必要はないのです(※ガボンの人、ごめんなさい)。とにかく、世界史でよく出てくる国を覚えてください。それが分からなければ学校の世界史の先生に聞いてみるのも良いと思います。

あともう一つ、世界史を勉強していて登場した地名は、場所とセットで覚えるようにしてください。特に、国や王朝の首都はマストです。地図上にA、B、Cとポイントして、「~の場所を選べ」と出題するのはセンター試験の常套手段でした。第1回共通テストでも地図問題は出ています。こういう問題で事故らないようにするためにも必ず地図にこだわって勉強してください。何より世界史の勉強が格段にやりやすくなります。「都市名」「半島の名前」「川の名前」「海峡の名前」とかは出てきた都度覚えていくのが効率的にグッドです。

絶対押さえておきたいことの2つ目は、「年代をちゃんと覚えよう」ということです。なんだよ、あちこちで言われていることじゃないか、と思うのは仕方ないです。でも本当に大事だからあちこちで言われているのです。ここから逃げるのは歴史勉強においては禁忌に等しいことだと思っています。

さて、年代というのは「ピンポイントで覚えるもの」と「アバウトに覚えるもの」の2通りがあります。前者は「フランス革命➙1789~99年」みたいにピンポイントで覚え、後者は「十字軍遠征➙11世紀末~13世紀」みたいにざっくりと時代を把握します。

年代はいろいろな方法で出題されます。センター試験では「~世紀の出来事を選べ」とか「○○の時代と同時代に起こったものを選べ」とかが定番です。私大だと「~が起こった年を西暦で書け」とストレートに訊いてくることもあります。こういう問題は年代を押さえていないと本当に厳しいです。直接に年代を問う問題じゃないとしても、年代がわかっていればクサい選択肢を切ってしまうことだってできます。2021年からセンター試験にかわって共通テストとなりましたが、やはり侮ることは出来ません。僕も共通テストを解いてみましたが、年代がわからないと答えられない問題が何個もありました。また、試験だけでなく普段の世界史の勉強中にも「△△という戦争の~~年前に☆☆という出来事が起こっていたから□□なのか!」「○○と□□は同時代の出来事だったのか、だから繋がってるんだ!」といった具合で、年代暗記が理解の助けになることが多々あります。

年代を覚えることの重要性を力説したところで、「実際にどうやって覚えればいいの?」ということを話していきたいと思います。例えば、語呂合わせで覚える参考書があります。ただ、語呂で覚えると、思い出す時にいちいち語呂を経由しないといけなくて忘れやすかったので僕は苦手でした。だけどこれは相性の問題なので、語呂合わせが覚えやすいという人は全然いいと思います。

では僕はどうやって覚えていたかというと、シンプルに単語カードに自分で書いてひたすら回し続けるという方法で覚えていました。「表に出来事/裏に年代」という感じです。

上の写真は、僕が実際に使っていた年代暗記カードです。単元ごとに資料集を見ながら、年表にある出来事の年代はほぼすべてこのカードに収録しました。1個の単語カードにつき200くらい年代が書かれているので、おそらくこの容器には3000近い年代が収録されています。僕は学校にいる時も肌身離さずこの容器を持ち歩いていて(※不審者)、受験までに全部のカードを覚えました。さすがにここまでやる必要はありませんが(笑)。単語カードは古典的な手法ですが、篠原さんもYouTubeで単語カードを強く推奨しています(動画:https://youtu.be/LPKeLZbnN_U)。

では、実際にどれだけ覚えればいいのかというと、教科書の太字になっている出来事を中心に覚えるのがいいと思います。余裕があれば太字以外の出来事も覚えるのをおススメします。僕は王朝の成立と滅亡の年代(例:オスマン帝国➙1299~1922年)や、王様・皇帝の在位の年代まで覚えていました。余裕がある方は是非。

以上、記述にもマークにも共通する重要なポイントでした。「地図」や「年代」をシッカリ押さえると偏差値はハネ上がります。偏差値が上がるということは、相対的に他の受験生から頭一つ抜け出すことを意味します。それだけ多くの世界史受験生が「地図」と「年代」の重要性を甘く見積もっているということだと僕は思っています。ぜひ今日から意識を変えてみてください。

【論述対策】

さて、ここからは論述問題の対策についてお話します。

みなさんが一番対策に苦しむのがココだと思います。論述練習をする際に掲げて欲しい目標は「どんなテーマ・時代の問題にも対応できる一般的な解法を身に着けること」です。全ての人が、ここを目指して論述練習をするべきなのです。

そこで、まずは自分がどのレベルにいるのかを理解することから初めてください。論述練習をするときは、自分の立ち位置(レベル)が見えていないと「何が原因で論述ができないのか」を見誤ったり分析できなくなります。それでは具体的に解説していきます。

まず、「問題文が理解できないor指定文字数が埋められない」という人は、そもそも基本的な知識が足りていないと思われます。なので直ちに論述練習を中止してインプットに専念してください。そして苦手な単元を片っ端からつぶしていってください。「他の単元はともかく、ローマ史は得意だからローマ史の論述はやろう」みたいに考えている方がいればそれはやめた方がいいです。先ほど強調しましたが、論述練習は「どんなテーマ・時代の問題にも対応できる一般的な解法を身に着けること」が目的です。知識が不足している状態で問題を解くのではなく、まずは知識をインプットするところに立ち返ってください。

進学校だと比較的早めに教科書の内容が全部終わりますが、そうでないところは入試近くまでずれ込むことも考えられます。でも「まだ論述練習してない、ヤバい」と焦る必要はありません。たとえ共通テストが終わってから論述をはじめたとしても間に合います。なので、まずは覚えるべきことを覚える作業に時間を集中投下してください。

さて、そんなこんなで全単元を一通り頭に入れたら、論述練習に取り掛かりましょう。

論述問題を解く時は、問題を読んでイッキに書き出すのではなく、一つずつステップを踏んで解いていきます。僕が問題を作ってみたので、解きながら解法を見ていきましょう。

問.4世紀以降の、ローマ帝国とキリスト教との関係について180字程度で論述せよ。指定語句を一度は用いること。

《指定語句》

・三位一体説 ・コンスタンティヌス ・テオドシウス ・ディオクレティアヌス

定番と言えば定番の問題です。解法は次の通りです。

設問文が何を問うているのかを端的に要約する

この問題の場合「ローマ帝国とキリスト教の関係」です。ここをまず押さえてください。これに関係ないことを書いても点数にはならないし、解答スペースを侵食して書くべきことが書けなくなってしまいます。気を付けましょう。

設問文が要求している条件を洗い出す

「何を答えるべきか」を確認したら、次はそれに付属する条件を確認します。設問は「4世紀の」「180字程度」「指定語句を一度は使用する」という条件を与えています。この条件をすべて満たさなければならないということを意識してください。つまり4世紀以外のことを書いても採点者にスルーされるだけです。字数は180字程度ですが、「程度」と言われたらだいたい前後2割分の文字数が目安になると思います。つまり144~216字が目安になります。

問われていることに関連するキーワードを書き出す

今回は指定語句が与えられているのでこれをヒントにします。指定語句がなければ100%自力でキーワードを書き出す必要があります。キーワードは要求されている時代の範囲内で探してください。今回は4世紀から探していきます。「ディオクレティアヌス」に対しては「迫害」というキーワードが付随しています。「コンスタンティヌス」に対しては「ミラノ勅令」「ニケーア公会議」が付随します。「三位一体説」に対しては「アタナシウス派」「ニケーア公会議で正統となる」が付随します。「テオドシウス」に関しては「キリスト教の国教化」が付随しています。このように付随するキーワードも同時に洗い出してください。ところで、指定語句欄を見たらお分かりのように、指定語句はかならずしも時代順には並んでいませんので注意してください。

洗い出したキーワードを並べて文章にする

ここまで来たらやっと文章を作っていきます。ですが、注意すべきことがあります。まず余計なことは書かないことです。例えば今回の場合、ディオクレティアヌスは「迫害」という文脈でしか登場しません。勝手に「ディオクレティアヌスは四帝分治制を…」とか無関係なことを書くと時間と字数の浪費になっちゃうので気を付けましょう。あと、私情をはさむのも厳禁です。つまり「ディオクレティアヌスは残酷にもキリスト教を迫害した」とか余計な感情は入れてはいけません。残酷かどうかは個人的な問題であって論述問題の守備範囲ではありません。個人的な見解など必要なく、ただただ書くべき事実だけを客観的に並べていけばいいのです。論述問題は実に機械的なのです。解答例は以下の通りです。

《解答例》

303年、ディオクレティアヌス帝はキリスト教に対して大規模な迫害を行った。しかし、313年にはコンスタンティヌス帝がミラノ勅令によってキリスト教を公認すると、同皇帝によって催されたニケーア公会議ではキリスト教アタナシウス派が正統と認められ、三位一体説が統一教義となった。やがて392年にテオドシウス帝によってキリスト教はローマ帝国の国教となった。(167字)

正しい日本語になっているか確認し、おかしなところがあれば修正する

これは世界史ではなくて日本語の問題です。書き終えた自分の文章を頭から最後まで見直してください。漢字や文法の誤りがないか、あとは読みやすい字になっているかなどをチェックしてください。

以上が論述問題の解き方になります。この5つのステップを体が覚えるまで集中的に回してください。練習量は人それぞれです。論述問題集や赤本を使って「解法が染みついたぞ」と自信が持てるまで量をこなしてください。あと、添削はぜひ受けてください。学校の先生や塾の先生にお願いしましょう。

その過程で志望校の過去問を研究し、「中国史や現代史が頻出だな」「宗教のテーマが頻出だな」など傾向を分析して、各自対策を行うとバッチリなのではないかと思います。我慢強く頑張ってください!

【マーク対策】

共通テストだけでいいよという方は、とにかく教科書の内容を一通りカバーして、そこからは「過去問➙間違える➙教科書に戻る➙過去問➙間違える➙教科書に戻る」というパターンをループするのがいいと思います。問題を解く時は、「なぜ自分は③を正解だと判断し、①②④を間違っていると判断したのか」という意識を常に持ってください。「なんとなく正解っぽい」という解き方は、ちゃんと内容が理解できていない状態です。問題を解く時は自分の思考回路に敏感になってください。

さて、次は私大の世界史ですが、基本的には前に述べた「地図と年代」にこだわった勉強をすることに変わりはありません(共通テストも同じですが)。私大のいけないところは「知ってるわけねーだろ!」と怒りたくなるキテレツな問題が平気で出てしまうことです。篠原さんも「早・慶の問題は殺意がわく」と動画で仰っていますが、ここに関しては解けなかったとしても落ち込まないことが大事です。はっきりいって奇問は歴史オタクの守備範囲です。大事なのは、必ず解ける問題を必ず正解することです。これならできるはずです。先走ってニッチな用語ばかり覚えようとするのではなく、まずは「苦手分野をなくして全範囲の基本事項を網羅したよ」という状態に仕上げることを優先してください。こうして失点を最小限にとどめる努力をすれば突破口が開けてくるはずです。

【おすすめ参考書】

最後に、僕がお勧めしたい世界史の参考書をご紹介して終わろうと思います(敬称略)。

・『大学入試 ストーリーでわかる世界史B』(鵜飼恵太 KADOKAWA)

この本はいわゆる「講義系」の参考書です。「古代~近世」「近現代」の二冊あります。内容が詳しく少しお高いので、共通テストだけという人にはオーバーワークになってしまうかもしれません。ですが、文章がかなりフランクに書かれていて親しみの持てる書き方をしているので、内容は教科書の数倍も頭に入ってきます。個人的な感想ですが、山川の教科書は文章がガチガチで、理解させようという気概が感じられません(笑)。そんなこんなで、この参考書は苦手な人に寄り添った本なのでおススメです。

・用語集

用語集であれば何でもいいと思います。意味が分からない用語、もしくは曖昧な理解で済ませてしまっている用語は、放置していると試験の時に自分の首を絞めてきます。用語の定義をしっかり押さえることは超大事なので、用語集は使用しましょう。

・『歴史とは何か』(岡田英弘 文春新書)

これは受験参考書ではありません。はじめに断っておきます。この本は文字通り「歴史とは何か」について書かれている本ですが、とても内容が濃く、高校生が読めば世界史勉強の解像度が180度変わります。僕は大学に入って読みましたが、高校生の時に出会っておきたかったと思うくらいの本です。高1~2生には時間があれば読んで欲しいと思ったので、紹介させていただきました。薄めの本なので構えることなく読めると思います。

【さいごに】

ここまで読んでいただきありがとうございました。長くなりましたが、本気で書いたので、読んだ時間に見合うだけの情報は提供できたかなと思います。世界史は本当にきついです。でも、正しく芯の通った勉強を継続すれば結果がついてきます。ちょっと継続したくらいではダメですが、努力を裏切る科目ではありません。最後の最後まで、頑張ってください。心から応援しています!

最後にお知らせです。受験勉強に困っている方・不安がある方は篠原塾長の無料電話相談を受けてみてくださいね!